外出から戻って、家の近くまできて、やっぱりもうちょっと歩こうと思ったりすることがよくある。
自宅前を素通りして、隣りの駅まで行って引き返してみたり、行ったことのないコンビニをさがして歩いてみたり。
そして、そういうときは、もう家には戻れないような気がしてくる。
歩いてきたはずの道は消えてしまっているかもしれないし、
たとえ家の前まで戻れても、自分の持っている鍵では、扉が開かなくなっているかもしれない。
どうしようかな?と思うのだけど、
ただ真っ直ぐ歩いて行けるところまで行けたら、幸せだなあと思う。
逆に言えば、この先どこへも行けない可能性があるなら、帰らなくてもいいと思ったりもする。
家も、家にある物も、いったい何なのだろう。
私に必要な物しかないはずなのに。
今日は土曜日で、街がにぎやかで、私も便乗して華やかな気持ちで帰路についた。
明日もいい日なんだと、今日が終わってもいないのに確信しながら。
誰もいない道は、映画のセットみたいだった。
蝉の鳴き声だけが現実をつくっているみたいで、夏が終われば、時間も止まっちゃうような気がした。
だけど、すでに秋の虫の声もする。
世界を回しているのは、小さい小さい君たちなんだね。
ご近所の猫が、車も通るというのに、道の真ん中に座っていた。
1点をみつめて、じーっとしている。
きっと、このままどこかへ歩いていこうかと考えているのかも。
私に気づいて、逃げるように玄関のある道の端っこに戻ってしまった。
「ここは私の家よ。」と言っているような顔で私にアッチイケ視線を送ってくる。
こちらは何年も顔見知りなのに、いつになったら親愛の視線をいただけるのでしょうか。
コンビニで、かき氷を買った。
初めてみるバイトくんがレジ係だった。
いつもは入っていないスプーンが入っていた。
なんだか嬉しかった。
無事に家について、金でも、銀でもない木のスプーンでかき氷を食べた。