スーパーの入り口にスイカがたくさん並んでいるだけで、夏の気分になる。
蚊取り線香とゴザのい草の香りがしてきて、スイカを並べていたガラスの器の重さを思い出した。
もう何年も触ってもいないのに、夜店で釣ったヨーヨーの弾む感触がリアルに復活してきた。
着せてもらった浴衣の色が誰とも同じじゃなかったことが嬉しくて、ずっと着ていたかったけど、あの頃の下駄は、あんまり足に優しくなかったから、長い間出歩けなかった。
いつも近所で挨拶をするだけのおばさんたちがとても上手な盆踊りの踊り手さんたちで驚いたり。
人が輝く瞬間を目撃した記憶は、心のなかの星になって残っているものだなあ。
ところで、スイカをみただけで、夏がやってくるような私だから、食べたら、昔に戻れちゃうんじゃないかしら。
もしも本当に戻ることができる夏があるなら、コーラス部員としての初めての夏がいい。
音楽室で汗をぼたぼた落としながら、合唱コンクールの特訓を受けた日々に戻りたい。
楽しかったというよりは、辛かったことが嬉しい記憶だなんてどうかしていると思うけれど、あんなにがんばれたことは私の宝物で、愛おしい夏なのだ。
今日は、14日のライブのリハーサル。
厳しかったコーラスの先生は心のなかに生きている。
歌うたびに叱ってもらう。
私の夏は、まだまだこれからも、何度も、始まるのだ。