片方だけの手袋が、ずっと木にくっつけてある。
子供用だから、だれかが拾ってつけたんだろう。
黒地だったけど、だいぶ薄くなった。
最初は指がピンとしていたけど、最近は力なく折れている。
もう迎えにきてもらえないって、気づいちゃったのかな。
まるで本物のこうもりみたいに、ビルの隙間にひっかけてある黒い傘。
はじめてみたときは、カラスが死んでいるのかと思って、ドキッとした。
きっと、長く吊りさがっているから、変な膨らみがついているのだ。
こうもり傘という名前をつけた人は、ほんとうにすごい。
ビニール傘はクラゲ傘にしたい。
だから、クラゲにみえるようにパーツのすべてが透明になってほしい。
風が吹いて、落とし物のマスクが咳をしたように動いていた。
寒暖の差が激しい。
アスファルトもカゼをひくのかもしれない。